コラム 2025年11月1日
手根管症候群
金孝燮
代表院長
手がしびれて夜目が覚めるなら — 手根管症候群
手根管症候群(carpal tunnel syndrome)は、手首の手根管(carpal tunnel)を通る正中神経(median nerve)が圧迫され、親指、人差し指、中指、薬指の半分にしびれと痛みが生じる疾患です。国内で最も多い末梢神経絞扼症候群であり、特に40〜60代の女性に多く発生します。
なぜ正中神経が圧迫されるのか
手根管は手根骨と横手根靭帯(transverse carpal ligament)に囲まれた狭いトンネルです。このトンネルの中には正中神経と9本の屈筋腱が一緒に通っています。トンネル内の圧力が高まると、最も脆弱な構造である正中神経が真っ先に圧迫されます。
- 反復使用:手首の屈曲・伸展の反復で腱鞘が腫れトンネル内圧が上昇
- ホルモン変化:妊娠、甲状腺機能低下症、更年期に組織浮腫で悪化
- 診断検査:ファレン検査(手首を60秒屈曲保持でしびれ再現)、ティネル徴候(手根管打診時の電気感)
夜間症状が特徴的です
睡眠中無意識に手首が屈曲すると手根管内圧がさらに上昇し、早朝に手がしびれて痛くて目が覚めるのが典型的な様相です。手を振ったり振り払ったりすると一時的に症状が緩和します。
韓方治療戦略
鍼治療で手根管周辺の血行を促進し神経圧迫を緩和します。薬鍼注入で腱鞘の浮腫と炎症を直接解消し、夜間の手首装具(wrist splint)で睡眠中の手首屈曲を防止します。
- 鍼治療:大陵穴(PC7)・内関穴(PC6)・魚際穴(LU10)の刺激で正中神経周辺の循環改善
- 薬鍼:抗炎症薬剤を手根管隣接部に注入し腱鞘浮腫を軽減
- 夜間装具:睡眠中に手首を中立位に保持し夜間症状を防止
- 韓方薬:当帰・川芎などの活血薬で末梢血行改善と神経栄養支援
放置すると筋萎縮が起こり得ます
初期にはしびれと痛みのみですが、長期間放置すると親指の下の母指球筋(thenar muscles)が萎縮し物を掴む力が弱くなります。この段階に至ると回復が難しいため早期治療が重要です。