コラム 2025年8月21日
中高年の股関節ケアと転倒予防
金孝燮
代表院長
股関節骨折は予防が最良の治療です
高齢者の大腿骨頸部骨折(大腿骨の頸部骨折)は単なる骨折ではありません。手術後でも1年以内の死亡率は約20~30%に達し、生存しても多くの方が独立歩行能力を永続的に失います。この骨折のほとんどは転倒によるため、転倒予防こそが股関節骨折予防です。
転倒の危険因子
- 下肢筋力の低下:加齢に伴うサルコペニア(sarcopenia)で下肢筋力が落ちると姿勢保持やバランス回復能力が低下します。
- バランス感覚の低下:前庭系の老化、固有受容感覚の低下、視力低下が重なります。
- 骨密度の低下:骨粗鬆症があると軽い衝撃でも骨折が起こります。
- 薬剤:降圧薬、睡眠薬、鎮静薬などがめまいや眠気を誘発します。
- 環境:滑りやすい床、暗い照明、敷居、緩いカーペットなど
下肢筋力とバランス訓練
転倒予防の最も効果的な方法は下肢筋力とバランス能力を鍛えることです。
- 椅子からの立ち上がり:手を使わずゆっくり座って立つ動作を1日10回×3セット
- 片足立ち:壁や椅子につかまって片足で10秒立つ、徐々に時間を伸ばす
- かかと-つま先歩き:直線上を歩くように足を一直線に置きながら歩く練習
- バンド運動:ゴムバンドを用いた股関節の外転・伸展筋力強化
韓方治療で筋骨格の健康を維持
韓医学では加齢に伴う筋骨の弱まりを肝腎虚(かんじんきょ)の範疇とします。
- 韓方薬(関節丹):肝腎を補い筋骨を強化する処方で、骨密度維持と筋力保存を支援
- 灸治療:関元穴・命門穴に灸を据えて下焦(かしょう)の陽気を補強
- 鍼治療:下肢経穴の刺激で下肢血流を改善し筋機能を活性化
- 骨密度管理:カルシウム・ビタミンD補充、適切な日光曝露、荷重運動を併用
環境改善も忘れずに
浴室への手すり設置、滑り止めマット、適切な夜間照明、敷居の撤去など生活環境の改善も必ず併行する必要があります。運動能力の向上と環境改善が組み合わさったとき転倒予防効果が最大化されます。